昨日は『おばさま』の話を書きました。
非常に心地いい会話に癒やされました。
それで思い出した話がありますので、今回はその話を。
かれこれ30年ほど前の話。
その当時、お付き合いしていた女性と毎週のようにデートをし、近畿のあちこちに出かけていました。
そんなある日のこと。
その日は大阪の天神橋筋商店街を歩いていました。
天神橋筋商店街といえば、日本一長い商店街で有名ですが、デートでもよく行った場所です。メインの商店街から脇道にそれても、そこそこの商店街があり、非常に楽しめました。
で、メインの商店街から少し脇に入った商店街を歩いていた時、店頭に『焼き鳥』を置いて販売している店がありました。
今では考えられない陳列の仕方ですが、当時は違和感を覚えませんでした。
その陳列方法は、樽のような物を立てて置き、その上に大皿を置いて、焼き鳥を積み重ねる、という方法。
ガラスケースにも入っておらず、虫よけもなく、衛生的にどうなん?というような陳列ですが、昔は違和感なく見ていました。
その店頭で彼女と二人で
「焼き鳥食べよっか?」
「うん、食べたい」
「どれにする?」
「う〜ん、どれにしよっかなぁ」
「”せせり”って何やろ?美味しいんかな?」
「私は鶏皮が食べたい」
としばらく店頭で『あ〜だ こ〜だ』言っていたら、店番をしていた女性(推定40台後半)が痺れを切らして
「も〜、あんたら!!これとこれにしとき!!」
と、かなりの圧で言ってきたので、その圧に押されて思わず
「は、は、はいっ!!」
と返事をして、無理やり押し付けられた店員さんおすすめの『焼き鳥』を手に歩き出しました。
(『大阪のおばちゃん』は会計時も何事かブツブツとお小言を言っていたように記憶しています。あまりにも店先でイチャイチャと喋っているカップルに”イラッ”としたんじゃないかと推測します)
今となっては何を食べたのかは覚えていませんが、彼女のご所望の『鶏皮』でも、私が初めてみた『せせり』でもなかった、と言うことだけは覚えています。
その時、初めてと言っていい『大阪のおばちゃん』に触れて、その圧に押されてしまったことに、最初は歩きながらなんとなく頭の中が『ポカン』とした状態でしたが、しばらく歩いていると、どちらともなく笑いだし、大爆笑しました。
問題の焼き鳥の味はと言うと、とても美味しく味わい深い物で、もう一串食べたい衝動に駆られましたが、もう一度戻って買う事はしませんでした。しませんでしたというより出来ませんでした、が正しいですね。
今ではすっかり『大阪のおばちゃん』への免疫がつき、図々しい態度を取られても対処できるようになりましたが、あの頃はまだまだ免疫がなく、圧に負けたという次第です。
現在に当てはめると、全てが”アウト”な販売方法ですが、なんか懐かしさも感じます。
この女性は『販売員』としてはまれな『大阪のおばちゃん』でしたが、日常生活ではこういう場面は多々ありました。
人情味あふれる『大阪のおばちゃん』の存在は、地域に必要だ、と思っています。