私は、主に河川に関する防災・減災に関わる仕事をしています。
最近の大雨や台風による水害を目にするたび、心が痛みます。
少しでも水害を減らそうと日々努力しているのですが、想定以上の雨が降ると、前提が崩れてしまうので、災害が大きくなってしまいます。
水災害に関して以下に書いていきたいと思います。
なぜこんなに水害が多発するのか
テレビのニュースでは今年の梅雨は、異常なほどの降雨がありました。
通常、河川は50年確率の洪水や30年確率の洪水に対応できるように護岸等が設計されています。50年確率の洪水流量時の水位に法律で定められた余裕高(洪水流量によって変わります)を足した高さの堤防高が設定されています。
今年の降雨量はそれら〇〇年確率流量を遥かに超える水量が発生し、河川の容積以上の水が流れた、と思われます。
また、かなりの流木が流れていて、それらが橋にひっかかり、そこで水が堰上げられ、そこで堤防高を超えてしまった。
など、いろんな理由が考えられます。
ダムは有効ではないのか
通常であれば、梅雨時期にダムはある程度水位を低くするように、予備放流を行います。集中豪雨が予想される場合などは事前放流を行います。
簡単に言うと、大雨が来ることがわかっている場合は、予め放流を行い、大雨が降る前に貯水池の水位を下げておいて、大雨が降っても大丈夫なようにしておく運用のことです。
それをしていても(事前放流の運用を見誤った場合も)、ダムの許容量以上に水が貯まりだすと、ダム本体の耐久性にも関わってくるため、緊急放流をせざるを得ない場合があります。
ダム管理事務所も出来る限り緊急放流は避けたい、と思っています。逆に言えば緊急放流をする場面は、その地域一帯が非常に危険な状況にある、ということです。
河川が堤防ギリギリに流れている場合に緊急放流すると、確実に水が堤防を越えますし、破堤する可能性も高くなります。
ダムによる影響がある地域では、水位が上がる場合、下がる場合にはアナウンス放送があると思います。(少なくとも私の住んでいる宇治川では必ずアナウンスがあります。)それをしっかりと聞いておかなくてはなりません。
土砂災害も非常に危険
山の近くに住んでいる方は水害の他に、土砂災害にも気をつけなければなりません。
土砂災害の起きやすい地域には、砂防ダムなどが設置されていると思います。
砂防ダムもしっかり管理されていればいいのですが、砂防ダムが満砂になっていたら、砂防ダムの意味はありません。
土石流は、先頭に大きな岩や礫が高速で流れてきます。映像をいくつか見たことがありますが、恐ろしい速さで破壊力でした。
かなり早めの避難が大事だと思います。
水害・土砂災害にどう対処すればいいのか
これは『早めの避難』に尽きると思います。
テレビでもさんざん言われていますが、日頃から自分の住む地域の避難所の場所を確認しておく、ハザードマップを確認しておく、防災セットを用意しておくというが重要です。
また、防災に関するイベント等に参加してみるのもいいです。
消防署の救命講習や、大学なんかだと実際に体験できる防災施設もあるかもしれません。
神戸には『人と防災未来センター』もあります。大学生以上だと入館料がかかりますが、非常に貴重な経験になると思います。
おわりに
水の流れは見た目以上に速いです。
これくらいなら大丈夫だろう、と足を出した瞬間、足をとられて転倒し流されてしまう、という事があるかもしれません。
『まだ大丈夫』・『これくらいならまだいける』という考えはダメです。
かなり早い段階での避難を心がけましょう。
今回の豪雨災害で被災された方々へ心よりお見舞い申し上げます。
被災地におかれましては、一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。