関西に住んでいると、一度は言われるであろう言葉
「吉本に行ったらええねん」。
冗談で言われることもあれば、嫌味で言われることもあります。
面白い事を言ったり、行動をする子は、よく言われていた印象です。
とりわけ私世代の方(50歳以上)は特にそうではないか、と思います。
『吉本』とは、言わずと知れた『吉本興業(吉本新喜劇)』の事を指します。
私はそのワードを言われたことがあります。
それはまだ私が純真無垢だった小学3年生の時の事。
その当時の私は、勉強よりも遊ぶ事と給食に全力を傾ける、活発な少年でした。
授業中は一応真剣に受けていた記憶があります。
何事も真剣に取り組む、ごくありふれた小学生だったと自負しています。
小学3年生の時の担任の先生は男性で、私はとても信頼して大好きだった先生。
私が影響を受けた先生でした。
当時、音楽の授業は女性の先生に替わってもらっていました。
その女性の先生は、年配の先生で少し怖かった。
音楽は嫌いではなかったのですが、その先生が苦手であまり楽しく授業を受けた記憶がありません。
そしてついにその日が来ました。
その日の授業は一人づつ課題曲を唄うという授業内容。
課題曲は『富士の山』。
♫あ〜たまを雲の上に出し・・・・♫
という、あの唄。
一人づつ順番に起立し、先生のピアノ伴奏に合わせて唄っていきます。
一人が終わると先生の『一言』が付いてくる、というおまけ付き。
クラスの半分くらいが唄い終え、おまけの一言を貰いますが、あまり褒め言葉はなく、大半はダメ出しばかり。そんなんやから好かれへんねん、と思ったのは数年後のこと。
当時は『怖い』という印象しかありませんでした。
さぁ、自分の番が回ってきました。
私は、それまでの同級生たちの『ダメ出し』を聞いていて、同じようなことをしないように注意しながら全力で唄いました。
それはそれは心を込めて、目をつぶり、一生懸命唄ったんです。
唄い終わり、ホッとして先生の方を見ます。
そう、先生の『おまけの一言』を聞くために。
自分としては結構出来が良く、恐らく褒められるんじゃないか、と予想し、少し微笑みながら先生を見ていたと思います。
先生は最初に
「なんでそんなに首を振りながら唄うんや?」
と、苦笑しながら聞いてきます。
私自身、首を振りながら唄っていたという意識はありません。当然頭の中は『?????』状態です。
続けて
「吉本に行ったらええねん」
と。
その一言で私への『おまけの一言』は終わりました。
『吉本に行ったらええねん』
『吉本に行ったらええねん』
『吉本に行ったらええねん』
『・・・・・・・・・・・』
私の頭の中は『吉本に行ったらええねん』がリフレインしていました。
そしてかなり傷つきました。
かなり一生懸命取り組んで、自分ではよく出来たと思っていただけに、ショックは大きかったんです。
冗談っぽく言われていたならまだ受け入れられたでしょうが、嫌味のように、少し怒ったような口調で言われたことにショックを受けました。
今では『良い思い出』と思えるようになりましたが、小学校へ通っている間はずっと心に突き刺さっていました。
それ以来、冗談で言われることはあっても、嫌な意味合いで言われることはありませんでした。
その経験があったからこそ、言葉選びにかなり慎重になったんじゃないか、と思っています。反面教師ですね。
今では吉本興業も大きな会社になり、この言葉が当てはまらない企業になりました。
今もこの言葉は使われてるんでしょうかね。