年齢を重ねていくと、思わぬところに『毛』が生えてきます。
私は40歳を越えた辺りから、思わぬところに毛が生えてきました。
40歳を少し過ぎた頃、大阪本社に通勤で電車通勤をしていた時の事。
朝の通勤電車にはサラリーマンやOL、高校生や中学生が乗っています。
ある日、通勤電車に揺られながら、つり革に捕まってまどろんでいると、前の席に座っている一人の女子高生の視線が突き刺さりました。
半分寝ている頭で、視線を送ってくる女子高生を見ると、どうも様子がおかしい。
なんだか何かを我慢しているような、よく見ると笑いをこらえているような感じでした。もちろん、私は笑われるような格好はしていませんので、思わず周囲を見廻すと、どうもそれが女子高生のツボに入ったのか、肩を揺らして笑いを押し殺していました。
私は、その笑いの意味がわからず、その日一日『?????』な気分でした。
翌日、同じ電車の同じ車両に乗り込むと、昨日の女子高生と隣に友達らしき女子高生の2人が私に視線を寄越してきました。
よく見ると、彼女たちはヒソヒソ話をしながらクスクスと笑っています。私を見ながら。しばらく彼女たちの視線の先がどこに向けられているのかを見ていると、どうやら私の首辺りに向けられています。
で、なにげに首のあたりを手で触ってみると、その行動がまた女子高生の笑いのツボを刺激したようで、”友達”という心強い仲間を得た女子高生は、昨日のように押し殺した笑いではなく、キャッキャした笑いをするように。
そして首をさすった私は、その笑いの元を知りました。
『毛』が生えていたんです。それも喉仏の頂上の位置に。
それは笑いますよね。私でもクスッとしてしまうかもしれません。
普段からあまり真剣に鏡を見る癖がないために、こういう事になったんですね。
その日、どうにも笑われることにイマイチ納得してなかったんでしょうね。なんとかその女子高生たちを爆笑させてやりたい、という使命感がフツフツと湧き上がってきました。
仕事を終え、家に帰り、どうすれば爆笑をかっさらえるかと考え、喉仏に生えた毛を”のどぼと毛”と命名し、”のどぼと毛”のリボンを結んで『のどぼと毛』と書いた小さな小さなメモをぶら下げる、という事をしてみようと画策しました。
しかし、いろんな素材の物をリボンにしてみようと試しましたが、上手くいかず、泣く泣くその作戦を諦めました。
そして笑いに変えられないなら、そんな中途半端な”毛”は抜いてしまえ、と抜いてしまいました。
それ以来、ほっぺたに1本だけ太く長い”毛”が生えてきたり、耳にも1本だけ生えてきたり。
鏡を見る習慣があまりないので、結構伸びてから気がつくことが多く、『えっ、こんなところに”毛”が生えてる』ということがしばしば。
そんな”毛”を見つけては楽しんでいます。