私の職場には大学院卒の若い男子Yくんが来ています。
Yくん以外は40歳を超えている者ばかりの、おっさん集団なんです。
Yくんは、私の勤める職場に来て2年。
普通の人だと、仕事に慣れて専門用語も理解できつつある時期です。
が、Yくんは配属当時から全くと言っていいほど進歩がない。
それには性格もあるだろうし、おっさんとの付き合いも慣れないところもあるのでしょう。一人浮いている、という状況。
配属当時のYくんの印象はこちら。
配属当時、Yくんは工具の名前や、専門用語がわからず、こちらの指示を理解できない状況でした。そんなYくん、理解できないなら理解できないなりに聞くとか、一生懸命に動き回るなど、やる気を見せてくれればいいのに、それができません。
理解できない状況に陥ると『黙る・フリーズする』状態になる。
そんな様子を見て私はついつい少しきつい言い方で
「それやそれっ!持ってこい」
「あそこにある物を取ってきてくれ。違う!それやない!」
と大きな声で言うものですから、Yくんは更に萎縮してしまい、ある日本社の課長に
「もうここの現場、きついです。」
と泣きついた過去があります。
それがあってから『パワハラ』と言われないよう、なるべくYくんに関わらないように心掛け、作業指示をする場合も、必要最小限&丁寧な言葉を意識して接していました。
それから2年。
Yくんは常にマイペースで、全く進歩なし。
先輩からのプレッシャーも無い状態で、自分のペースで仕事をしています。
駆け出しのYくんのマイペースですから、傍から見ていると『だらけている』ように見えるのです。
先日、計算をするよう指示を出しました。
2年間、事あるごとに『計算』をさせて、現場でも困らないように理解を深めてもらおう、という親心から、多少時間がかかっても『じっと我慢して』待つ、という事が続きました。
しかし、先日のYくんは計算に時間はかかるし計算間違いはするしで、さんざんな状況でした。
よくよく聞いてみると、現場に『関数電卓』を持ってきておらず、符号の間違いもあって計算結果が違ったようでした。
たまらず
「なんで関数電卓を持ってけぇへんねん!やる気がないと思われてもしゃぁないで」
「何年やってんねん。何遍も同じような計算をしてきたやろ!」
と2年ぶりに『大声できつめに』注意しました。
すると
「もう何も言わないでください。辛いです」
と涙目で訴えてきました。
そこで私の心のストッパーが外れてしまいました。
「何も言うなって言うけど、2年間あなたのペースを尊重してきた結果がこの体たらくやろが。何も言うなっていうのなら俺の近くに来るな」
「仕事をなめとんか」
と、感情的になってしまいました。
Yくんは
「いえ!なめてません。自分ができる仕事を言ってください」
と、今までにない『やる気』を見せてきましたが、ストッパーが外れてしまっている私には、その言葉は逆効果。
「おまえに何ができんねん!計算もできへん、現場仕事もできへん。車の運転もイマイチな状況で、頼める仕事なんかあるかい!」
「本社に行って課長に相談してみたらどうや。ここの現場は勘弁してくださいって」
などなど、普段言わない言葉が次々に出てきました。
そういう事があってからYくん、ほんの少しですが前向きに仕事と向き合っている様子が見受けられるようになりました。
今の御時世、こういう事があった時点でYくんが会社に『パワハラを受けた』と言って申告すれば、私は注意を受けるんでしょうね。
仕事を教えるって事が難しく思えた日でした。