私がまだ大阪に住んでいた頃の話。
腰椎椎間板ヘルニアを患い、整備士を辞めてプログラマーとして働き出した頃のこと。
通勤は地下鉄谷町線(現在はOsakaMetro谷町線)で、大日駅〜谷町四丁目駅まで通勤していました。
整備士の頃は車通勤で、いつもツナギ(円管服)を着て通勤していて、とても楽でした。それがプログラマーとして働くようになって、地下鉄で通勤し、服装はもちろんスーツでした。
慣れない地下鉄通勤とスーツのおかげで、帰る頃にはかなりの疲労を感じていました。
いつもは東梅田駅に着くと、降車客が一斉に降り、車内はガラガラに。いつも東梅田駅を過ぎると、大日駅までは乗客がまばらになるのが通例。ですので、東梅田を過ぎるとようやく緊張が解けるような気分になります。ガラガラになった車内で、少し行儀が悪いんですが、深く座席に座り、足を投げ出して座るんです。(もちろん人が多い時は行儀よく乗っていまし
た。人が非常に少ない時限定ですね)
その日も疲れを引きずりながら地下鉄に乗り込み、谷町四丁目〜東梅田までは座席に座ることが出来ず、吊り革につかまり地下鉄に揺られていました。
ホームに背を向ける形で吊り革を握り、東梅田駅に到着。
いつものごとく、乗客の大半が降り、車内はいつものようにガラガラになりました。
ホッと溜息をつき、目の前の座席に腰を下ろし、左右を見渡して人が少ないことを確認して、足を投げ出す。座席に座り足を投げ出すまでの時間は、降車客の最後の人がホームに降り立つまでくらいの時間です。
さぁ、これから大日駅までの十数分、ゆったりとした気分と態度で帰ろう、と思った矢先、まだ停車していた地下鉄に大勢の浴衣を着た軍団が・・・・・。
いつもと違う状況に、場違いな浴衣軍団を目の当たりにして、しばらく何事が起きているのか理解できませんでした。
ただ、身体はしっかりと反応していて、投げ出していた足は引っ込められ、姿勢の悪い座り方は姿勢良く座り直していました。
地下鉄が走り出し、ゆっくりと顔を上げると、浴衣軍団の方々はとても体格がよく、頭を見ると女性のように髪の毛を一つに束ねているではありませんか。
そこでハッキリとこの浴衣軍団の方々は『相撲取りだ』と認識しました。
車両内に何名の『相撲取り』が乗っていたでしょうか。今となっては覚えていませんが、かなりの密集度だった気がします。
隣の車両を見ると、ガラガラもガラガラ、2,3人ほどしか乗っていません。私の周りにはかさばる体格のいい浴衣軍団が密集している状況。こころなしか息苦しさまで襲ってきました(相撲取りの皆さん、すいません。決してディスってるわけではありません)。
『途中で降りるだろう』と高をくくっていたんですが、結局私と同じ大日駅まで一緒でした。
大日駅の地上部分は、国道1号線と中央大通りが交差する大きな交差点。
当然出口は4方向にあります。
私の家は、その4方向の出口の中でも一番寂れた方面に行く出口で、とうてい『相撲取り』さん達が来るとは思えません。
地下鉄が大日駅に到着し、浴衣軍団が一斉に降りていき、それを見届けてから最後に私が降りました。『はぁ、なんだか息苦しかった』と思いながらも、もうここで浴衣軍団の方たちともお別れだな、と出口に向かって歩きだすと、その視線の先についさっきまで見慣れた姿の人達が歩いている・・・・・・。
ま、ま、まさか、私と同じ方向を目指してる?というかこの先には相撲取りを満足させるような飲食店って無かったように思うけど?と頭の中にそんな考えがぐるぐると回っている。
結局その方々は、私の小学校時代の同級生の親御さんが営んで居られるお寿司屋さんに入っていかれました。
家に帰り、親にその事を話すと、どうやら同級生の親御さんはタニマチをされているそうで、大阪場所になると相撲取りの方々がやってくるのだそうです。
ちょうどそのタイミングに私は遭遇した、という事のようでした。
なかなか貴重な体験をさせていただきました。
タイトルにあるように
『地下鉄にお相撲さんが乗り込んできたら・・・・』
・萎縮して顔を上げれない。
・息苦しくなる(これはおそらく気分的なものと思われる)
・座る姿勢がよくなる。
でした。